政令市移行準備不足露呈
過労死ライン月80時間超10名
元政令指定都市推進室職員
熊本市が労働基準法を無視して、多くの職員に超過勤務を強いている事が本紙の調査で判明した。今回は紙面の都合上「政令指定都市推進室」と「子育て支援課」に絞って報道するが、他の部課でも同様な事案があり、幸山市政の人事管理の杜撰さが露呈されたと云える。見出しの「月間超過勤務280時間」は、正確には282時間である。本紙の情報開示請求により判明した政令指定都市推進室(現区政推進課)A職員の本年3月の超過勤務時間である。情報開示は「個人のプライバシー」を理由に氏名ではなく算用数字の123で示されたが、ここではABを使用する。政令指定都市推進室(以降推進室と呼称)には当時室長以下15名が勤務していたが、Aの282時間を筆頭に218時間1名、201時間1名の計3名が200時間を超えている。過労死ラインとされる月間80時間超は7名に上り、200時間超を併せると職員のが過剰な超勤を行っていたのである。労働基準法では1日8時間、週40時間で、月に直すと180時間前後である。但し地方公務員については労基法第36条の適用外で超勤の規制はない。勿論政令指定都市移行を前に関係部局が多忙であるのは容易に想像出来るが、政令市移行は数年も前から判っていた事、熊本市幹部らの管理不充分としか思えない。
昨年度の熊本市職員の残業代(超過勤務手当)は総額35億強と云われる。超過勤務手当(一人当たり)は昨年度は1時間平均2608円である。最大超勤のA職員にこれを当て嵌めると73万5千円余、これに正規の給与30数万円を合わせると実に100万円以上の月収となるのである。市民の間から「熊本市の職員で月収60~70万円貰っている人がゴロゴロ居る」と不審の声が挙るのも宜なるかな、である。この超過勤務について熊本市人事課は「御指摘の通り超過勤務が多いのは確かです。各部署について適正な方法をとるように指導はしているが、総定員減の中でひずみが出ている事は確かだ。関係部局と是正に向けて検討している」と回答した。当方が指摘したのは労基法第36条、通称「さぶろく協定」を組合と締結なしの残業は「労基法違反」である。人事課は「協定は結んでいない」と認めたので取材を進めた訳だが、前述の通り、地方公務員には36条の適用がないと知り、本記事を部分的に訂正している。
月残業80時間超過
子育て支援課17名・子ども政策課3名
"残業代稼ぎ"でローン支払いも
上記政令指定都市推進室には及ばないが、子育て支援課も過労死ラインと云われる月間超過勤務(時間外勤務)者が48名中17名、全課員のを超えているのである。
当時の同課々長は「そこまで居るとは知らなかった。政令市移行による区役所の新事務の手配等で多忙であったのは確かだが、指摘の様に時間外勤務ゼロの人が居る反面80時間超が17名も居るのは仕事の配分に課題があったのかもしれない」と話す。48名中17名が80時間を超えて勤務している反面で、16名が超勤ゼロである。同課に居た職員の一人は「うちの課は子供手当ての支給窓口があります。受給者の中には少しでも遅れると怒鳴り込んだり、窓口で騒ぐ人が居るので対応に苦慮しているのは確かです」と語る。窓口でギャーギャー騒ぐ連中は子供手当てをパチンコで遣ったりしている輩である事が多い。だが見逃せない内部告発もある。
同課の職員の複数が「残業代で子供の塾費用を捻出している」とか「車のローン分を残業で稼いでいる」と放言している事である。告発者は「昼間手持ち無沙汰で不用な書類に目を通しているが、勤務終了時間が近付くと急に活発に動き出し、時間外勤務を申請している姿が見られます。数名は居ます」と断言する。この点も元課長に突っ込んだが、「多分そんな事はないと思いますが、若し事実であれば許されない事です。関係者と相談して対処したい」と語るが「部下とトラブルを起こしたくない」症候群係長、課長が幸山市政下で蔓延して現状ではどれほどの効果的手段が講じられるかは疑問だ。
又、同課が窓口になっている「寡婦貸付金」の大量焦げ付きがある。同制度は夫と死別したり、離婚したりして女手一つで子育てに励んでいる母親を扶けようと設けられた制度で、子供の就学資金や通院費用などを貸付けるものである。返還は子供の就学が終わってからであるが、これが借り得?とばかり返還に応じない母子家庭が増加、昨年度末で未回収金は50%超となっていると見られる。しかも借入れ申請の際の保証人に生活保護受給者が多く居るのも問題であろう。担当課長は「申請時に保証人の収入など調べるようにしているんですがねえ」と云いながらも生活保護受給者が保証人になっている事実を認めた。若しこれが一般の金融機関であればどうだろう。先ず申請自体が受理されない筈であり、回収も厳格に行われるであろう。市の職員にとって貸付金が戻ろうと焦げ付こうと自分の懐には全く響かない、返還を強く求めて相手とトラブルとなるより毎日が楽しく過ごせればよいのである。貸付金が税金という公金から出ている意識など微塵もないのだろう。聞く所によると、これらの母子家庭を市に口利きするのは公明、共産の市議が多いとか。子育て支援課は新年度から子ども政策課と合わせ子ども支援課になっている。
労働基準法適用されず
地公法利点生かす
労働基準法第36条では労働組合の過半数の代表者と使用者は書面による協定をし、これを行政官庁に届け出た場合においては第32条、第40条の労働時間又は前条の休日に関する規定にかかわらず、その協定が定めるところによって労働時間を延長し、又は休日に労働させることができる。以下略。と謳っている。これを通称「さぶろく協定」と呼ぶ。筆者は「市職員の過重労働と残業稼ぎ」の情報を得て取材に動いた。当然人事課にも聞いた。この時聞き方が悪かったのか、答え方が不味かったのか「一般公務員は対象外です」と云ったらしいが、それを聞き落としていた。公営企業などはさぶろく協定締結が定められており、一部を除いて労使協定が結ばれている。その協定で決められた超過勤務は「明らかに違法」(県人事委員会)であるが、市の見解は「管理者の許可を受ければ適法」と回答。同じ問題を市職組の書記長にも尋ねた。「さぶろく協定は結ばなければいけない。組合としては要求はしているが出来ていない。超過勤務時間の多いのも耳にしていて縮減について考慮中だ」と、未だ締結のない一部の職場について回答したのを早トチリして本面を書いたのである。正に無知の極みであった。
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