熊本県民新聞 WEB版
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■ 発 行 所 ■
〒861-8034
熊本市東区八反田1丁目14-8

発行者:福島 宏

電話:096-234-8890
FAX:096-234-9883


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 報道機関と官庁の癒着は古くて新しい課題だが一向に改まる様子がない。「昔総評今報道」と揶揄されたのは二十年以上前か。以後今日まで時の政権の御用達を務め、世論をリードして来た。地方に於ては、県、県警、県庁所在地の市とべったり癒着しているのが新聞、テレビを主体とするマスメディアである。
  今回は熊本市にピントを絞って報道する。何故か。幸山市長は初出馬の時からメディアを利用し当選後も最大限利用しているからである。裏で動いているのが幸山市長の兄(元熊日社員)というのが定説である。幸山市長のメディア操縦術の一つが新聞、テレビなどの広報費の増大である。そもそも熊本市には市の広報「市政だより」が存在する。「それでも周知出来ない部分を補足する意味もあってメディアを利用している」と云うが、以下に記する様に多額の税金をメディアに投入する意義は那辺にあるのか。
  一例が下に掲げた平成二十年七月二十日付熊日二面ぶち抜きの大広告である。「熊本市基本構想が決定しました」とあるので左頁下段の「基本構想」がこの広告の主目的と思われる。「『くらしわくわく』プロジェクト」「『めぐみわくわく』プロジェクト」「『おでかけわくわく』プロジェクト」「『出会いわくわく』プロジェクト」の四項目の囲み文言を云いたかったのだろうと推察する。この文言、これまでも、この広告以降も市政だよりに何度も出ているではないか。「敢て大金を投じて広告を打つ意義はない」と小紙は断定する。この広告代五三〇万円である。納得出来ますか、あなた、きみ、おまえ。紙面の都合で広報実績として開示された平成十八〜二十年度分を載せた。

平成18年度
RKK ¥8,568,000
TKU ¥619,500
KKT ¥3,116,350
KAB ¥5,289,250
ケーブル ¥3,672,000
平成19年度
RKK ¥8,631,000
TKU ¥1,942,500
KKT ¥2,679,350
KAB ¥4,667,250
ケーブル ¥3,672,000
平成20年度
RKK ¥1,235,000
TKU ¥525,000
KKT ¥2,075,000
KAB ¥18,800,000
ケーブル ¥4,315,000

  上広報金額に価格差があるのは「効率化を狙う為、人気番組の前後に入れてもらっている」(広報談)ので、余り話題を呼ばない番組しかない局には自然と発注が少くなるとの説明であった。右金額の中には「定時」の項目があり、原則週一回市政だよりを放映している。この定時で突出していたのがRKKで十八年度、7,106,400円。十九年度も同額だが、二十年度は0となっている。二十年度はRKKに代ってKABが18,800,000円で定時放映権を得ているが、「各局のコンペの中でKABが優れていたから契約した」(広報)と云う。所が何故かTKU、KKTは三年間を通して「定時」の放映権は得ていない。定時放映時間は各局均一でいいと思うのだが…何故だ。


20年度 新聞5紙に2億5千5百万円
費用対効果に疑問

 次に新聞での広告費を見てみよう。

平成18年度
熊日 ¥11,346,825
朝日 ¥2,093,490
読売 ¥1,102,500
毎日 ¥1,386,630
西日本 ¥1,937,250
平成19年度
熊日 ¥10,316,050
朝日 ¥2,418,800
読売 ¥2,415,000
毎日 ¥1,790,880
西日本 ¥2,383,500
平成20年度
熊日 ¥10,884,325
朝日 ¥1,732,500
読売 ¥6,615,000
毎日 ¥2,100,000
西日本 ¥4,175,000

 新聞広告の出稿代の基準について熊本市広報課は「権威ある熊本ABC協会から各紙の発行部数を聞いて判定していますから正確な数字です」と説明して次の数字を出した。

各紙の県内の発行部数(20年度)
熊日 355,963部
朝日 43,649部
読売 57,025部
毎日 16,466部
西日本 23,051部

 この発行部数の裏を取る為小紙独自に各社を取材した所、全社が数千部水増しして回答した(熊本県民新聞とは名乗らなかった)。そして新聞業界に詳しい人物に確認した所、五社共市の広報が公表した発行部数を下回っている事が分った。押し紙を週刊新潮で暴かれた読売が一番公表値との差が多かった。各紙の実数に近い数字を小紙が掴んでいるとの証し?として地元紙熊日の現在の発行部数を書く。同紙の実数346,600部前後である。熊日の名誉の為に云えば同社は押し紙はやっていない。市広報担当者が云った「一番信頼出来ると云った日本ABC協会は熊本にはない。加えて云うなら同社の発表数字(新聞、雑誌、週刊誌等)は十年程前から「余り信用が置けない」として大手クライアントは広告代理店「電通」の資料に基づいて出稿しているという事である。発行部数イコール広告代、チラシ折込代に反映される訳で、水増し公表は如何なものか。尚、大手紙の場合、熊本以外、例えば関西、関東発行紙への広告も含まれているので必ずしも発行部数にイコールしていない。
  この他に「リビング熊本」485万、202万、236万(18、19、20年度千円以下省略)。「デリすぱ他」として200万、73万(18、19年度)出稿している。以上は広報課扱いだけで、他の部署から時々のキャンペーン等でテレビ、新聞に広告を出しているが、紙面の都合で次号に譲る。所でこの広告費について元幹部だった市OBに聴いた所「市政だよりを出しているのにそんなに多額な広報費が支出されているのはおかしい。自分の時代では考えられない事だ」と驚いていた。



 熊本市の政令指定都市移行に向けて第二の難関が立ちはだかっている。第一の難関は周辺町の合併であった。頼みの益城町は住民の反感を買った為、住永町長提案の熊本市との合併案は否決された。幸山市長は初出馬の公約の一つに政令市の実現を掲げたが、一期目で何の進展もなかった。焦った余り、益城町との合併が不調に終ると、それこそ形振り構わず市の幹部の尻を叩いて周辺町に働き掛けを行った。勿論自身も出向いて「良い事尽くめ」をPR。加えて首長や町議には、合併特例法に基づく役職離脱後の待遇が下らない約束までした。そのエサに釣られたのか、人口八千余の富合町、一万九千人の城南町が先ず手を挙げた。続いて植木町を取込んでやっと下地が整った所で、「区割り問題」が浮上した。合併町の要求を殆ど鵜呑みで受入れた熊本市に対し、合併三町は「嘗めてかかっている」のが現状ではないのか。元々「エゴの固まり」と云われた城南町八幡元町長に村崎富合元町長、今度は政令市移行後の区役所の設置と場所で啀み合っているのには笑えた。八幡元町長については「不用な事業を発注しようとしている」として、旧町時代の腹心達が「世直し隊」を作って反対運動の真最中だ。現在五区案と六区案で喧々囂々の議論が噴出しているが、交通インフラの不備な熊本市で新区割りを行えば高齢者や、共働き世帯の住民が不自由を被るのは明白。幸山市長は「市民の声を大切にする」と傍観の態だが、この処理を一歩謬ると政治生命が揺らぐ懸念もある。政令市長としての手腕は全く期待出来ない。



観光客の素通り変わらず
周辺商店街に恩恵はなし

 熊本市が九州新幹線全線開通を睨んで計画立案した「市街化活性化」の一環である桜の馬場整備事業が愈々動き出した。場所は県営城内プール跡地約1.9ha。その半分東側に物販店、イベント会場などを建設する。受注企業グループ(凸版印刷がメインで十社で構成)が提案した本欄上の外観透視図に見る様に飲食物販店、観光案内所に囲まれる様に二階建の「歴史文化体験施設」が建設される。建設、施設は民間のノウハウを活用するとしてPFI方式(民間資金と経営手法を活用)を採用した(熊本市では先に市総合保健福祉センターもPFI方式を導入)が、これには一部有識者らから「全て丸投げの無責任事業ではないか」の声も挙がっている。市の直接関与に比べて「総事業費を三億円前後軽減出来る」と担当部局では云っているが、果して信用していいものかどうか。凸版の後うしろには大手広告会社博報堂の影もちらつく。博報堂と幸山政史市長の係わりも何かと噂の種だ。所で、桜の馬場地区整備案が浮上したのが幸山市政二期目に入って間もなくの頃だ。「幸山取巻きの経済人、学者等の発案」と云われ、熊本城観光に訪れた観光客を商店街に誘導、広く回遊性を持たせるのが目的と言う。それにホイホイと乗ったのが幸山市長と一部利権狙いの市議達である。同事業参加を公募した際、事前説明会には準大手の建設会社や商社、地場企業など二十数社が参加したが、凸版グループを除いて悉く下りてしまった。何故か。某コンサルが語る。「説明会の段階で某設計業者、一部市議、事業者審査委員会の一部委員らが『凸版グループで決り』と同グループの営業力を吹聴していたのでは天の声同然です。設計だけで四〜五千万円は掛る案件で芽がない競争に参加する莫迦は居ません」と語る。結局応募した企業グループは凸版を頂点とする企業グループだけであった。PFIに参加した企業は凸版印刷、久米設計、味岡建設、岩永組、山本建設、トータルメディア研究所、西部電気工業、九州綜合サービス、キューネット、まちづくり熊本、以上十社。これらの企業は「熊本城観光交流サービス鰍平成二十一年五月十八日で設立登記、当初資本金は三千万円、代表取締役には凸版印刷叶シ日本事業本部九州事業部常務取締役が就任、取締役には参加企業の関係者が就任している。物販関係は、改正中心市街地域活性化基本法に基づいて設立された第三セクター「鰍ワちづくり熊本」(丸本文紀代表取締役)とお菓子の香梅が選定された。レストラン・食事処の収容人数は三百人前後と云われるが、熊本城に来る観光客の大半が午前十時半頃から午後三時頃迄(団体、県外客)と云われ昼食時に集中する観光客を捌くのは難しいと思われる。


二の丸駐車場廃止の愚
新設施設に客寄せ図る 観光シーズン車渋滞必至

 桜の馬場地区整備事業費の総額は四十八億円、内八億円は国からのまちづくり交付金で賄う。四十億円(金利、維持管理費等)は熊本市が毎年二億円、二十年間で払う。これだけの投資に対し、商店街、周辺町への効果は、と云えば殆ど期待出来ないのではないか。花畑地区再開発も、中心になって進めていた企業が傾き、土地買収資金で底をついた今、予定通りの開発は不可能で、買収した土地を熊本市に買取れと泣きつく始末である。桜の馬場に集客しようとして考えついたのが二の丸駐車場の廃止案である。市の担当者は「まだ確定していない」と弁解するが、二月八日午前十時から開かれた市議会の「中心市街地の活性化に関する特別委員会」で市企画課が出した「熊本合同庁舎跡地利用計画(案)」では「二の丸駐車場は分かりにくい場所にあることから、二の丸公園、県立美術館の利用者や高齢者、障がいのある方などを始め、主に県内の利用者を想定した駐車場として位置づける。これに伴い、バス駐車場を全て新駐車場に移転し『熊本城復元整備計画』に示したオープンスペースを拡張する」とはっきり謳っているのである。二の丸には高齢者、障害者を主に利用させる意味であろうが、これ程矛盾した表現がよく出来たものだ。現在観光客の中心は定年退職後のんびり暮している層が殆どではないのか。そんなツアー客を乗せたバス群を段差の強い新駐車場に回わすという事は桜の馬場観光施設を利用させる為との意途が丸見えではないか。
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