熊本県民新聞 WEB版
本紙の信条

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〒861-8034
熊本市東区八反田1丁目14-8

発行者:福島 宏

電話:096-234-8890
FAX:096-234-9883


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 小紙4月号の熊本県漁業協同組合連合会(県漁連)松本忠明解任劇の報道は、漁協関係者に大きな反響を呼んだ。殆どが「よくぞ書いてくれた」「おかげで真相が判った」という声であった。この時熊日は「新会長藤森隆美氏に聞く」としてインタビュー記事を載せていて小紙と対照的であった。

 4月号取材中、解任された松本前会長と出身母体の天草漁協は対策を協議、某弁護士に相談し地位保全の仮処分を目指したが、解任そのものは県漁連の定款に添ったものとして他の手段を検討。その結果組合員総会による理事全員の改選請求に決まった。各漁協に呼びかけた結果、38組合中25組合が同調、5月11日松本前会長らが理事改選の請求書を提出した。恐らく藤森新会長にとっては「想定外」の出来事であった事は、直後に藤森氏が親しい理事に慌てて相談した事からも分かる。

 5月30日県漁連会館で開かれた臨時総会では23対13の圧倒的多数で全理事解任が可決されたのである。藤森氏が会長ポストを失った瞬間である。在任期間僅か二カ月、謀略を巡らせてまで得た漁連会長ポストは一炊の夢に終わってしまった。正に「慌てる乞食は貰いが少ない」を地でいった様なものだ。元々副会長就任も「松本会長が反対する周囲を説得して就けた」と話す関係者も居り、謂わば恩を仇で返した結果の自業自得と云えようか。



新理事告示
反藤森派が優勢
松本氏再任有力
 前号にも書いたが、県漁連の理事は漁場を持つ地域の漁協を、県北から第1部分会として5部分で構成、組合員数などを勘案して各部会から1名~2名の理事が選出される。6月に入って各漁協は総会を開き組合長を選出すると共に各部会の理事を選任した。選任された理事8名(理事総数は9名だが、県漁連の吉岡専務理事が任期満了で退職した為1名減)は6月19日幹事会を開いた。その中で、一名不足の理事を決める推薦委員会が開かれ、全員一致で第2部会所属の松尾漁協組合長の黒田正明氏が推薦され、黒田組合長も受けて理事全員が揃った。新理事は二週間の告示期間が必要な為、決定後告示がなされている。各理事は7月6日に開かれる予定の臨時総会で組合員の承認を得て正式決定される。今の所選任された理事が承認されるのはほぼ間違いないと見られ、7月6日に新理事会が発足、理事の互選により新会長選出が行われる。新会長は"名誉回復"を図るといった声が強く、松本忠明会長が再任されると見られる。

 前号にも書いたが、藤森氏が会長就任を急いだ理由は「来年の通常総会まで待てば、その直前に開かれる理事会で選任される可能性がなくなるから」であった。所が急ぐ余り、こじつけ理由で松本会長を解任した事から、中立的な組合員、組合長まで反藤森の声を挙げたのである。6月19日の幹事会で決まった理事は、1部会矢野、橋本。2部会高浜、藤森、黒田。3部会坂本。4部会杉田。5部会松本、浜の各氏である。この内、藤森氏支持と見られる理事は藤森氏を含め3理事の為「今後藤森氏が漁連会長に就く可能性は限りなく少なくなった」と見られる。ある関係者は藤森氏に「まだ若いんだからあと一期待て、と忠告したんだが、本人が聞かなかった。もう会長の芽はないだろう」と語る。所で、これだけ漁連を騒がせた藤森氏について、藤森氏が組合長を務める川口漁協の関係者は「もう組合長に手は挙げんだろう」と云っていたが、案に相違して組合長選任に手を挙げた。反対出来る組合員はなく(腹の中でブツブツ)すんなりと組合長に決まったという。

 話は脇道に逸れるが、"藤森会長転落"を一番喜んだのが県警であろう。来年、天皇、皇后両陛下をお迎えして開かれる「全国豊かな海づくり大会」に"問題児"が会長では面子丸潰れであったろうと思われる。漁協関係者も「藤森氏が漁連会長だったら海づくり大会の主役となった筈、これで安心しました」と語る。



人材不足・県漁連
 熊本県漁連に「人材が居ない」と云われて久しい。松本会長は、井手会長の急逝に伴う臨時的位置付けで会長に就任したものの、後任会長選びに様々な思惑が絡んだ結果4期目に突入したのである。人柄は良くも悪くもなく(頑固な所はあるが)「悪事も働かないが実績と云える足跡もない」と云われている。強いリーダーシップを発揮出来る人材が居ない、の一言に尽きると思われる。5月8日付熊日紙のインタビューに答えていた藤森会長の言に中味の無さがよく表れている。記者から「何から手を打ちますか」の質問に「漁業者の生活安定が第一だ。資源管理による安定出荷と販売単価の引き上げを目指す。熊本はPR下手。ノリを例にとっても、佐賀県では宣伝看板が幹線道路に並ぶが、県内には見当たらず、ブランド戦略が遅れている」以下略。と語っているが、佐賀産のノリは熊本産より上質なんですよ。肥料を撒いたり、たっぷり酸処理(余りいい事ではないが)を施したりと漁民が努力。その中で上出来のノリを選んで特定ブランド名を付けて高値で売るなどしているのである。ノボリを立てた位でブランド化は無理というもの。養殖のタイやシマアジも挙げているが、こんなものでブランド化が出来る筈もなかろう。要はこの程度の人材しか居ないという事だ。但し漁連会長を目指す理事だけは間違いなく多い。



頼もしい熊本のメディア
不法投棄情報は無視
藤森情報には"ホイ乗り"
 新聞、テレビを問わず現場を取材する記者達が云う言葉に「われわれは国民に知らせる義務を持っている」がある。この言葉を信じ、テレビ、新聞は「報らせるべきは報らせ報道内容に嘘はない」と信じている国民は多い。所が裏では諸々の思惑絡みで、報道すべき事柄を報道せず見て見ぬ振りも多々あるのである。その逆もありで、広告主が行う行事などは積極的に、それも大きく扱うのである。本面に書いた藤森川口漁協組合長もメディアの利用を心得ている一人である。地元テレビ局は勿論、全国ニュースで報道された事もあるのだ。熊日は数年前、夕刊一面を使ってその年のアサリの豊漁を報じた。主役は藤森氏であった。つい先頃も緑川と河口周辺の廃船について報道したが、これも藤森氏の演出で、陰では「補助金を引出すパフォーマンスにマスコミが乗っただけだ」の声もあった。

 本号墓石不法投棄も告発者は小紙に伝える前、テレビ、新聞各社に電話をかけたのである。その中で面白い断り方をした社を報告する。

 先ずテレビではTKUとKABだ。この二社は「古い墓石が不法投棄されている」という告発者に「この様な問題は警察の許可がないと取材出来ません」と云って無視した。新聞では「熊日も同じ答えであった」と告発者は云うが、筆者が取材の過程で熊日の高森支局が取材に動いていたと分かった。が、何故か報道されない。恐らく高森警察署の処分が出てから報道するのではないかと読んでいるが。県警記者クラブ、県政、市政各記者クラブでは「書くか書かないか」を談合で決めるという。
 県民に報らせる義務を、自ら放棄しているのが今のメディアの姿である。



県警高森署事情聴取中に
墓石搬出証拠隠滅図る?
後手に回る県廃棄物対策課
本社を菊池市泗水町に置き、大津町の国道57号線沿いに墓石展示場を持つ(有)アートストーン(資本金300万円、代表取締役田中勝尚)の天を恐れぬ悪業を報告する。同社は建替で引取った古墓を不法に山中に投棄、建立者の先祖の御霊を踏み躙っていたのである。

(有)アートストーンの会社設立は平成16年12月になっているが創業はその数年前と見られる。当初は田中社長が知り合いのS氏と図って、南阿蘇町のS氏所有の土地に石材加工場を建設し細々と営業活動を行っていた。他方現アートストーン取締役後藤満生氏は高森町の石材店で石工職人として働いていた関係で田中氏と知り合い(有)アートストーンを設立した。一方で田中氏は創業者のS氏と意見が合わず決別したが、S氏所有地に工場がある為以後土地を賃貸して土地代を徴収する関係である。このアートストーンの運営が軌道に乗り出したのは、中国、印度産の安い墓石を仕入れだしてからである。後藤氏の力でJA経済連に食い込み、JA主催の農業公園植木市に展示場を設置し、来園者相手に墓石を売り込む訳だが、言葉巧みに安さをアピール、植木市の期間だけで「1年分の仕事が取れる」程の業績を挙げると云われる。世間では、墓苑業者の広告が目立つ為、先祖が建てた古墓の建替えについては余り関心はないが、同業者によると古くなった墓の建替えは結構需要がある様である。車の場合買替えは下取りが前提になるが、墓の場合は古墓の"処分代"が必要になる。県内には何箇所か墓石を引き取る産廃業者が在るが、家名、氏名など刻まれた墓標だけは引き取らない。引き取った他の墓石は、石の質によって砕石機にかけられ、コンクリート建材として再利用されている。墓標については、その家先祖代々の慰霊であり、「ひょっとして霊が宿っているかも」の畏怖の念もあって引き取らないようである。良心的な業者は、それらの墓標を集めて回向した上で墓地となる敷地の下に埋めたりすると云う。所がこのアートストーンは写真に見る如く、引き取った墓石を高森町河原の山中に捨てていたのである。

県道際の杉林(知人)に山積みされた古墓石。 実地検分の4日後の写真。きれいに撤去されている。



高森署捜査難行か
2カ月経つも「目下捜査中」
関係者不信感持つ
 (有)アートストーンの古墓石不法投棄については、不法投棄に気付いた関係者が熊本県内牧保健所(高森町を管轄)に通報、内牧保健所職員が現地を確認して県廃棄物対策課に報告。数日後、熊本県、高森署員、アートストーン専務らが立会って高森町河原地区内2カ所に投棄されている墓石を確認した。その際、高森署員が後藤専務に、"現地保存"を伝えたかどうかは定かではないが、立会い調査の4日後に関係者が現地を訪れた所、一面の写真に見る通り、2カ所の墓石は見事に消えていた。この点について、後日、熊本県環境局廃棄物対策課を取材した所「搬出先は知らないが、高森署と連絡を取り合っているので、高森署は搬出先を知っている」と語った。筆者が県を訪ねたのは搬出後2カ月近く経っていたのである。にも拘わらず県は違法投棄物の再搬出先を知っていなかった。高森署と連絡を取り合っているのであれば、搬出先を知っていて当然である。加えて県は「違法投棄物であっても墓石は汚泥や有害物質を含む産廃物とは違うので、県の許可なく移動させても違法ではない」との回答であった。又、最初に情報提供を受けた内牧保健所職員は「この件はうち(高森警察署)に任せて下さいと云われたので当所としては助かった」との発言を行っている。事件を扱っている高森署も「墓石の山中投棄で、投棄を認めた業者立会いで実地見分を行った」"難事件"の為、田舎警察署でもあり、人手不足もあってか2カ月経っても処分は行われていない様である。

 所で河原地区に不法投棄されていた墓石は何処にいったのか、総量約80~90屯である。2カ所から消えた墓石は、左の写真の真中、上益城郡山都町高畑八ヶ迫地区の原野(S重機所有か)の一画に掘られた穴に埋められ半分程度がまだ地上に残っている状態で置かれている。あと1カ所は、立野地区内に在るアートストーン工場敷地内に山積みされている(左写真の3段目)。

 運搬したのは山都町に本社がある(有)S重機の8~10屯車である。S重機の代表とアートストーン営業担当のK氏が従兄弟の関係にあると云われ、運送を引き受けたものと思われる。不法投棄は10年前程から行われていたと云われ、河原地区県道沿いの所の墓石表面には蔓が這い青苔が生えた状態であった。



(有)アートストーン立野工場
渋谷川不法埋立ての噂も
 (有)アートストーンの工場は豊肥線立野駅の下方、渋谷川沿いの借地(約1反)に在る。スレート葺の工場と事務所が一体であるが、かつて石材を加工した工場は数年以上稼働していない。買付け後の文字入れは全てS石材に丸投げしているのである。中国は各地に御影石の産地があり、産地には石材加工業者が集り一つの町を形成している所もある。国内では神戸六甲地区が御影石の産地として有名であったが、ほぼ掘り尽くされ、現在は四国・岡山産が高級墓石とされる。中国産は品質がばらばらで硬度の低い黒御影などが低価格で流通、10年もすると石が欠けたり、色落ちしたりしている。アートストーンの石質について詳しくは分からないが、仕入値の2倍前後で売られていると云われ、利幅が大きい所から「石質はAクラスではないか」と見る業者も居る。
 黒御影は黒くて艶がよい程いいと云われる所から、中国では染色池に漬けて色付けする業者もあると聞いた。
 アートストーンは、自社工場敷地内にもずい分前から古墓石を持込んで放置、貯った分は高森の山中に運んでいるのではないかと見られている。筆者が現地確認を行った際も7~8基分の古墓石が周辺に置かれていた。すぐ前を流れる農業用水路の渋谷川も「工場を拡張したらしく、流れが変わった所がある」との声も聞かれた。
 県は早急に現地調査を行うべきではないか。同工場は、数年前、中国などから送られてくる墓石の梱包木材を夜間に焼却した為、町役場から指導を受けた事もある。これらを通じて一貫しているのは「産廃物、古墓石に金をかけないで処分する」といった「金儲け主義」が透けてくるのである。墓を建替えた人からの"引取賃"は幾らかは目下調査中である。




 ㈲アートストーンは前にも書いた通り、JA経済連が主催して毎年2月に県農業公園で開かれている「JA植木祭」に出展している。しかし名称はアートストーンではなく「後藤石材店」名である。この植木祭に出展する他の業種にしても出展資格は「JA組合員か準組合員」に限られる。所謂「農業の振興」が目的だからである。但し組合費を納めれば「準組合員」の資格が得られる。アートストーンの後藤専務はJA阿蘇の準組合員という事から参加資格を得ていると思われる。墓石業者は他に1社が出展している。区割りは前年の実績が勘案されるが、後藤石材は「売上げの8割程度しか申告しない」と云われ、競合するあと1社は逆に2、3割増しで申告するらしい。同業他社は「アートさんは植木祭りで掴んだ客に外交をかけ売上げを伸ばしている様だ。われわれは出展しても出展料やリベートが高いので、余りメリットを感じない」と語る。
 現在熊本県内で販売(建立)されている墓石の8割は輸入品と云われ、中でも中国産が多くを占めている。御影石は特級からC級位にランク分けされているが、産地や石質(硬度や不純物混入)で仕入値は大きく異なる。熊本の墓石業者の多くがS社とM社に発注、S社の中国関連会社が注文に応じた石材を集め船便で届くパターンの様である。届いた石柱(石塔とも仏石とも呼ばれている)は、アートの下請を専門に行っているS石材に搬入され、これで文字加工から通称「建こみ」と云われる建立まで丸投げで行われていると云われている。



墓標引取り渋る産廃業者も
 墓の建替えについては前述した通り、古墓の処分が大切である。大方の業者は、お坊さんに来てもらって経を上げて「魂抜き」(たましいぬき)をして骨壺などを移して工事にかかるという。古墓を引き取る産廃業者は、県内に2、3カ所あるが、殆どが「墓標のままでは引き取らない」と云われ、持ち込む側に墓標の文字が分からない様砕いてくる様に要求するという。そこで業者は運転手などに砕かせるが、中には「たたりが怖い」として渋る者も居るらしい。寺院や墓苑以外に自家所有の墓所を持つ家は旧墓を埋めた上に新墓を建てる家が多い様だ。旧家程古い墓がある訳で、先祖の御霊を疎かに出来ないとしてお墓の取扱いには神経を遣っている。アートストーンも、この魂抜きは行っているが、だからといって山中に棄てっ放しは御霊の冒涜以外の何物でもない。小紙がアートストーンの悪業として追及しているのはこの部分である。金儲けの為には墓標を単なる産廃物として山中に投棄、処理費用を惜しむ金儲け主義が許せない。取引先とのトラブルも多く、数年前M産業㈱の熊本支店長が解任された。その際も同社が絡んでいたとされる。そのM産業は去る5月19日付で売買代金支払いを求め提訴している。
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