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熊本市東区八反田1丁目14-8

発行者:福島 宏

電話:096-234-8890
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鎮座1300年記念事業
地元神社に200万円寄付
 熊本市北区河内町在の「河内阿蘇神社」は霊亀元年(715年)に阿蘇大神を勧請して創建された神社で、平成15年に鎮座1300年を迎えた。祭神は建磐龍神など十二神で河内町を中心に周辺町村に氏子を持つ。平成15年に鎮座1300年を迎えるに当り「鎮座1300年祭実行世話人会」を結成、社殿の修復などを行った訳だが、それに伴い同神社が募金を行った。その中で最高額を寄進したのが村上寅美県議である。同神社社殿内の「寄付者御芳名」にも最前列に名前が掲っている。この200万円の寄進の際、村上県議は、100万円を寄進した同町の4人の中の一人に「ぬしどんが100万もするけん俺が200万出さなんごとなった」と愚痴ともとれる発言をしたと聞いた。県議ともなれば一般人に横並びは出来ないのだろう。で、この寄進、別の言葉で云えば寄付になるが、政治家は自己の選挙区内の寄付は公選法で禁じられている。これは寺社であろうと、福祉など社会性が高い施設も例外ではない。ベテラン県議である村上氏がこの寄付禁止事項を知らないとは思われない。これまでも選挙の度に県警が違反の上位にマークしていたが果たして今回は?



ヨーマンビル 遂に競売
第3者の手を経て九州農水に
 村上寅美県議がオーナーを務め、うなぎを中心に海産物卸の“大手”として知られた(株)ヨーマンが実質活動を停止して数年が経つ。それでも「(株)ヨーマン」が倒産したという話は聞かない。業界に詳しい人物によれば「ヨーマンが倒産と騒がれないのは、登記簿上に生きているからだ。登記簿上に解散とか、閉鎖となって始めて倒産になる。ヨーマンが手形を切らなかったのも幸いしている。手形が不渡りになれば即倒産と見做される。加えて村上氏が現職県議の強味もある。金融機関も、融資先が議員や首長の場合強制執行を控えるという暗黙の了解があるようですから」と話す。その暗黙の了解が先頃破られたのである。

 ヨーマンのメインバンクは熊本ファミリー銀行↓熊本銀行と続いたが、福岡銀行との合併でふくおかFGに組み込まれた。ヨーマンビルが建つ土地は西区八島町字髙橋方728番地32、昭和49年7月に売買で(株)ヨーマンが取得、平成4年10月鉄筋コンクリート・鉄骨造陸屋根の5階建で、先頃の熊本地震でも殆ど損傷を受けなかったという。建築資金は農林漁業金融公庫から2億7千万円+6千万円を調達したが、その後熊本ファミリー銀行から1億7千万円の根抵当権が設置された。借入金がどの程度返済されたか分からないが、平成21年9月福岡銀行が根抵当権者に変り、平成24年4月に又熊本銀行に根抵当権が移った。平成27年8月根抵当権の元本確定、同日付で熊本銀行債権不存在で、又根抵当権は福岡銀行に移って、平成28年3月アビリオ債権回収(株)に債権譲渡となった。

 他方、同726番5の土地1290㎡と建物は、前所有者が経営不振で手離した物件を平成11年7月(株)ヨーマンが買収した。同所もヨーマン第2工場として使用していたが、平成21年9月、九州農水(株)に売却した。

 九州農水(株)は、小紙が報道した様に、平成14年8月(株)マルトラとして村上寅美氏が設立したが、平成21年9月九州農水と名称変更した会社である。取締役は寅美氏の義弟木下優喜氏、同村上朝美氏の2人で、代表取締役は寅美氏の長女朝美氏が就任している。名称変更とともに土地建物も九州農水が売買で取得した。同所には中小企業金融公庫が1億7千万円の根抵当が設定されていたがヨーマンビルと土地、この第2工場も相互に金融機関に共同担保に供されていた。
 平成28年8月、熊本地裁はこれらの物件の競売を決定した。この熊本地裁の決定は飽くまで形式的なもので、中心で動いたのはふくおかフィナンシャルグループの福岡銀行であった。同行は、同行の北九州、下関支店などが海産物を扱う業者に買い取りを打診したが、「相手が村上県議ではねえ」と二の足を踏んだ。



福岡銀行苦肉の策で処理
 別欄に書いた様にヨーマンビルの建物、土地については差し押えられ競売に出されたが、事前の根回しとして福銀が自行の下関、北九州等の各支店を通じて売却しようとしたと書いた。どの業者も手を挙げなかったのは、債務者が村上県議の上、土地の境界が一部明確でないのも原因の1つと云われる。福銀にしても不良物件扱いで早く関係を断ちたい思惑もあったのか、最終的に「熊本県水農産販売協同組合」に打診して了解を取った。同組合は、平成26年5月に田崎市場内に設立された協同組合で県内8市2町1村の地区からなっている。平成28年8月10日同組合が競売物件を2500万円で落札、所有権を移動した。しかし3か月後の同年11月10日付売買でマルトラ(株)にほぼ同価格で売却している。要は公籍上(株)ヨーマン所有の土地建物が第3者を経て村上県議の長女が代表を務める会社に移ったということ。これでヨーマン(個人保証をしている村上県議)は多額の負債が消え、土地建物の抵当権は消えたが、所有者が別会社になった事で取引業者など多くの債権者は“差し抑え”を執行する事は出来ない。美事な“うなぎ擦り抜け”の術である。マルトラ(株)の本店は西区河内町河内1515番地1で、平成28年9月6日に設立、代表者は先述の村上朝美氏である。設立目的は、「1土地建物の所有・売買・管理及び賃貸。2その他上記に附帯する一切の業務。」となっている。土地建物が競売され、第3者に所有権が移った1か月後にマルトラを設立したという事は、将来これらの土地建物を入手出来るという前提をもとにしていたと断定してもおかしくはないであろう。福銀としても「ヨーマン、村上県議との関わりを断ちたい」とした意向が見え見えである。熊本銀行、第一信金など他の物件で債権を抱えているが、回収不能の声が多い。



 2面の桜町地区再開発の解体現場で発生した発砲事件だが犯人逮捕の目途は全く立っていない様だ。企業絡みのこの種の事件は何故か犯人逮捕に至る事が少い。上通A地区再開発事業の際も工事を請負ったゼネコンの鹿島熊本営業所玄関に発砲する事件があったが、犯人は挙がらず仕舞であった。その前には地方選挙中に村上寅美県議の選挙事務所に2回放火事件があった。この時筆者は所轄の南署の捜査担当者に「何故犯人が分らないのか」といった意味の言葉をかけたが、その捜査員は「村上先生が協力してくれんとたいなー」と答えたのをよく覚えている。桜町再開発工事で、現場事務所に7発もの銃弾が発射された。直後から県警は捜査員を業界を中心に聞き込みに走らせたが「何らの成果もなかった(捜査関係者)」と他人事の様に話す。当時者(前田産業木村社長)の協力を得られないのか、別の力が働いているのか捜査の進展は聞かない。犯人は拳銃を持っている(捨てたか)のである。次の事件に使われる可能性もある訳で、市民の不安を解消するには犯人逮捕以外にない。ここは県警の捜査力に期待する以外はないが、是非県民の付託に応えて貰いたい。事件後、㈱前田産業の木村社長にはボディーガード2名がついたが、程なく見なくなった。裏で話がついた?。



 去る6月14日未明、中央区桜町の再開発現場で解体工事を請負っていた前田産業を頭とするJVの現場事務所で発砲事件が発生した。発射された銃弾は6発を確認。1発は見つからなかった。これから見ると素人考えながら「7連発オートマチック」か。噂ではフィリッピン製コルトと云われているが、これは当事者と捜査当局以外は不明。で、何故「カチコミ」が行われたのか。その原因で関係者等それぞれの見方があって面白い。

 銃弾が打ち込まれた翌日から前田産業代表取締役木村洋一郎(67歳)氏は早速ボディーガード2名を自身に配した。木村氏は前田前社長の娘婿だが、前社長同様若い頃はヤクザと交流を持ちヤクザ相手に喧嘩を売ったと云われる程の元気者である。前田前社長は既に解散した山野会と親交があったと云われる。「他にも山口系組織との付き合いも広い」と云われ、警察OBの一人も「あの仕事(解体・産廃事業)の世界は極道社会と縁は切れんどたいなあ」と云ったのが印象深い。二代目社長に就任した木村氏も似た様なもので、山口系I一家の先代と親交を持ち、三代目の現総長とも交流があると聞く。加えて、かつて小紙が報道した県警幹部(数年前退職)とは商大付属高校時代の先輩後輩に当り、同幹部が退職後も親交を続けているという。

 現在の前田産業は九州最大の組織「道仁会」の庇護下にあると云われている。以上の背景を持ちながら、何故カチコミ(警告又は脅しの発砲)が行われたのか一つの疑問である。

 極道社会は横(他団体)の情報も充分にあり、攻撃する場合、攻撃相手の背後に極道組織が存在するか否かを調べて行動すると云われている。であれば、相手企業のトップが山口系団体と交流があり(複数団体)、現在向う所敵なしの勢いを持つ道仁会が「面倒を見ている」前田産業に対して「軽々に極道筋は動かない」というのが裏街道に詳しい人物の見方である。では誰が仕掛けたのか。巷間囁かれているのが「同業者」説である。

 熊本県内・解体業者は20社前後。その頂点にいるのが前田産業で、子会社を含め年高で70億前後(平成27年度)、熊本本社の他福岡、鹿児島、沖縄の他東京にも支社がある。前田産業につぐ業者が星山商店と云われるが、こちらの年高は18億円(解体事業のみ)で、以下大きく下って大建工業、堀田工業等中小企業者続く。前田産業と2位の星山商店は「兄弟の様に仲がよい」と云われ、前田産業の産廃は星山商店が一手に引受けている。この2社が主導権を握っているのが現在の「熊本県解体工事業協会」であり「前田産業が自社の取巻き業者を優遇し、他の業者を締め出している」までに力を有しているのである。



銃撃犯県外同業者説も
情報少なく捜査難行か
 桜町再開発事業で旧建物の解体工事は前田産業を頭とする4社JVが受注した。入札に応募したのは以下の3JV。「前田=友栄、活誠、古閑」。「星山=山王、幸明、平」。「大建=坂眞、カネムラ、大洋」で、入札金額は前田JV11億4千万円。星山JV11億7百万円。大建JV8億9千8百万円。3社とも予定価格12億8千万円以下で問題はない。だが「技術評価点」で前田JV98点、星山JV89点、大建JV87点と、トップと3位で大きく開く。次の評価値は前田JV8・59(以下略)。星山JV7・7(同)。大建JV6・3(同)。で、再評価後評価値でトップの前田JVが最高値であっても落札となったのである。この入札は「総合評価方式」をとっているが「民間業者が発注する事業でこの方式を採用することは殆どない」と云われる。総合評価方式は官公庁発注事業でよく採られる方式で、応募条件に過去同様の工事を何件したか、業界の評価点数等を加味する方式である。従ってこれを厳しくする事で、上位特定業者しか受注出来ない条件にする事も可能である。

 以上の経緯で受注に成功した前田JVだが、実際に工事を行うのはJVを組んだ業者とは限らない。「『4社JVにせよ』との条件に併せて3社の名前を入れただけ」と云われる。事実この3社の主な業務は「とび・土木工事」で、年商も1億~数千万の小企業である。「頭となっている前田産業が自社で何%仕事をするのか分からないが、多くは下請を使うのが業界の常識だ」事業通は話す。実際にメインで解体に当たったのがY開発と云われ、ユンボとともに5階から地上まで落下したのもYの従業員だが、メディアで報道されたこの事故の1カ月程前にも同社の現場で落下事故が発生している。この時の事故の状況ははっきりしない(箝口令が徹底)が6、7階から2、3階分転落したという(軽傷)。前田産業の現場事故はこれまで折に触れ小紙で報道しているが、直近で旧ダイエー城屋での解体現場、都城の外、上通地区再開発事業の解体工事でも人身事故が発生している。

 発砲事件に移る。犯行の最有力?説が「前田産業が今回の事業を受注に際して某元暴力団員であったA氏を通すことで受注に成功した。その際謝礼として3億円を約束したが、解体で出た鉄筋類が予想より少く、需用も価格も下った事から3億円は払えない」と断った為「約束を実行せよ」との警告。「他県で地元業者が受注を予定していた事業を前田産業が横取りし、その後の話合いに応じなかった」等種々の噂が飛び交っているが真相は不明。県警もこの種の事件例に漏れず有力情報の提供がなく犯人捜査は難行している。




 桜町再開発事業に参画した熊本市のMICE施設建設に反対の立場をとる小紙である。何故反対するかについては、これまでも書いて来たが、大きな理由の一つに「市が大金を投下しても目的とする『賑いづくり』」が失敗に終わると信じているからに他ならない。市は経済波及効果を170億円と皮算用した数字を挙げるが、それは施設が80%以上稼動した際の計算である。MICE施設は、福岡を始め長崎市でも計画されていて熊本市が造ったからといって各種会議、イベントが流れてくる訳ではない。それでも突っ走るのは別の理由があるのは明らか。俗に云われているように「建設事業は、工費の3%がキックバックされる」というものである。この俗説がMICEにも当て嵌まるかは筆者の関知するものではないが、“李下の冠”にならない様に願いたい。本号で報道した村上県議絡みの(株)ヨーマンの“錬金術”には驚いた読者も多い事だろう。さすがにうなぎ業者、見事に負債をすり抜けたのは流石と云う他はない。桜町再開発の解体工事も4JVの競争入札ではあったが、本面で書いた様に最高価格のJVが落札した。そして労災事故を起こした。不思議だな。
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